田中みな実、アナウンサーになる
私はやれている。実力もある。20代の頃は勢い任せで井の中の蛙だったかもしれない
器械体操、美容、と夢中になってきた彼女が、次に見つけたのは、アナウンサーという仕事。最初から華やかに活躍していたイメージがあるが、実際は違った。
「入社時、アナウンス部に配属されたのは私を含めた女子2人。半年間の研修後、満を持してアナウンサーとしてデビューする10月、同期は女子アナなら誰もが憧れる朝の顔に大抜擢。一方の私が任されたのは、深夜の映画番組1本とスポーツ関連のラジオが1本だった。出社しても新聞整理、コーヒーの補充、電話番。惨めだった。何より焦ったのは、私が出社すると、生放送を終えた同期が廊下で悔し泣きをしている姿を度々目の当たりにすること。私が日々平穏に過ごし、コーヒーなんか淹れてる間に、彼女はどんどん成長していっている。このままでは差が開く一方ではないか。
焦ったところで、私に番組のオファーはない。仕事が来るのを待っていてもしょうがないから、できることから始めてみよう。スポーツ班の先輩にお願いして野球場の取材に同行したり、スコアのつけ方を学んだり。自ら動かないと誰も教えてくれないし何も変わらないことに気づかされた。その後少しずつレギュラー番組が増えていくのですが、先輩アナからはよく『田中はガッツがあるからねえ』とからかわれるほど、とにかくしゃかりきで、上しか見ていませんでした。控えめとか、謙遜とか、そんな言葉とは無縁の“出る杭は打たれる”なら“どんどん出よう!”の精神でガツガツしてました(笑)。今も、大きくは変わっていませんけどね」
自身が注目されるきっかけとなった、“ぶりっ子”や“あざとい”。そんなキーワードについて思うこと。
「どちらも私が本質的に持ち合わせている要素だと思います。だから、嘘でもつくりでもない。当然テレビ的な演出で誇張されているのは否めませんが、持ち前のサービス精神ゆえ、行きすぎて不快に思われた方も少なくないと思います。それでも番組が盛り上がり、楽しく観てもらえたらいいと、嫌われようが、批判されようが、どこか楽観的に捉えていた気がします。アナウンサーとしての役割を全うしたうえで、たまにプラスαの何かを提供できて、それが番組にとってプラスのエネルギーになったら、それは素直にうれしい。
番組内で下ネタを振られたときに、あからさまに嫌な顔をしたら場がシラけてしまうから『やだぁ~、もう、やめてくださいよ、最悪~』って困りながらも可愛く返すのは、計算でもなんでもなく、反射的にそうなってしまうんです。ぶりっ子も、あざとさも、ある種の社会性。女として優遇されるためのスキルではなく、仕事を円滑に進めるためのツールのひとつ。そう考えたら、アナウンサーは男女問わずあざといといえるかもしれませんね。場の空気を乱さないことを第一に考え、振る舞うことができるから」
多くのレギュラー番組を抱える人気アナウンサーだった彼女が、2014年にTBSを退社する決意をした理由───。
「朝の帯番組(毎日同じ時間に放送される番組)についてみたい!という憧れが入社当時からあって、ずっと希望を出していたけど、叶わず。現実的に考えれば、当時担当していた番組の数からして、朝の帯なんてできるわけがなかったんですよね。すべてを手放してまで『やりたい』という覚悟すらありませんでしたし。受け持っていたレギュラー番組がどれも大切で思い入れがありすぎたんです。
長年培った制作スタッフや共演者のみなさんとの信頼関係。私も番組の一部になれているという実感。この仕事を天職だと感じていました。なのに、その心地よさが次第に怖くなってきて。新しいことに挑戦しないと成長できない!と、またもや焦りが出てきてしまいました。もしかしたら会社の上の人たちは、バラエティ番組をひと通り経験させ、然るべきタイミングで朝の番組への起用を考えてくれていたのかもしれない。でも、私は待てなかった。20代、余力と勢いのあるうちに外へ出て挑戦してみたかったのです」
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撮影/菊地泰久(vale.) ヘアメイク/林由香里 スタイリング/後藤仁子 モデル/田中みな実 取材・文/中川知春 構成/鬼木朋子
Edited by 佐藤 水梨
公開日:
この記事に登場したコスメ(7件)