ビューティエディター・美容ジャーナリスト
安倍佐和子さん
肌と地球をつなぐ新たな選択肢
化粧品は、テロワールで語る時代へ
「化粧品の原料も口に入れるものと同じように考えるべき」そんなうれしいムーブメントが広がっている。独自に自社農園を構え、土壌から植物成分抽出までを徹底監理。テロワールにまでこだわった透明性の高い化粧品開発に取り組むブランドが増えているのだ。テロワールとは「土地」を意味するフランス語TERREから派生。ワインやコーヒーなどの品種や特徴を表す際に多く使われ、どんな気候や風土で、どんな土壌で育まれたのか、個性を色鮮やかに表現する言葉だ。
たとえばN°1 ドゥ シャネルがそう。2000種以上ものカメリアから厳選されたレッド カメリア“ザ ツァー”から抽出されたキー成分、レッド カメリア ペタルエキスは、フランス南西部ゴジャックにある自社農園“オープンスカイ ラボラトリー”で誕生。エッセンス ローションには、希少なカメリア由来成分が47%も配合されている。また、フランス・ノルマンディー地方グランヴィルにローズガーデンを構えるディオールは、新たに、水生植物のための農園ラトゥール=マルリアックをフランス南西部に開設。浄化力の高いスイレンをナーサリー(種苗場)で栽培し、抽出成分を新クレンジングラインに配合している。
そして日本のテロワールを追求するON&DOは、長崎県・五島列島に構える自社農園で椿を管理。花や葉を手摘みし、抽出成分を製品に配合していることで知られている。なかでも、一年に一度しか収穫できない若葉エキス配合のリフレッシングミストは、ボトルに収穫日を誕生日として記載。口に入れるものと同じように「旬をいただく」感性まで追求しているのだ。
昨今、生物多様性や環境保護のためにサステナブルなマニフェストを掲げるブランドは増えているけれど、これからは土壌や気候風土を知る植物学者や研究者現地の人々とともにテロワールを尊ぶモノづくりが主流に。プラネタリーヘルスを想うその先には、健やかで美しい未来が待っているからだ。
撮影/国府泰
Edited by 並原 綾
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