「容姿いじり」の葛藤
思えば、僕は幼少期からコンプレックスだらけだった。
肌が弱いうえ紫外線アレルギーを併せ持っていた。紫外線に当たると湿疹ができ、治る過程で湿疹は火傷を負ったようにくっつき、最後は紫色になって消える。小学生の頃、同級生からそれをいじられた。「一緒にサッカーやろう」と誘ったら、「やらねえよ、ブツブツ」と言われ、ただただ悲しくて、泣きながら帰った日のことを今でも覚えている。20代に入ると顔の大きさをいじられるようになった。いつかお金が貯まったら顎を削ろう、と本気で思っていた。
芸人になってからは、容姿(主に顔のデカさ)を舞台上で芸人仲間にいじられることで、笑いが生まれた。それがキャラクターとなっていくことで笑いが安定しておきるようになった。お笑いの世界で言うところの“おいしい”というやつだ。
ただ笑いの中に身を置いていられることがありがたく、自分の中で、コンプレックスだった容姿をだんだんポジティブにとらえられるようになっていった。「この武器は使わなきゃ損だ!」とばかりに、どんどん前面に押し出していった。
僕と似たようなコンプレックスを抱えてる人が、テレビでポジティブに振る舞っている僕を見かけたら、もしかしたらネガティブな感情をポジティブに変換できるのではないか? そんなふうに前向きに考えた。
その一方で、疑問も大きくなっていった。「お笑いだから」という言い訳が本当に通用するのだろうか? 芸人を真似て容姿いじりされることで傷ついている人がいるのではないだろうか? “いじり”は受け流すしかないのだ、と沈んでいる人がいるんじゃないか?
そして、やっぱり僕自身も傷ついているのではないだろうか?
僕への容姿いじりはテッパンネタとなった。“顔デカキャラ”が定着し、劇場やテレビの収録現場はもちろん、SNS上でも知らない誰かにかなりいじられるようになっていった。「芸人としておいしい」と思いつつ、胸がつかえるような感覚がどんどん大きくなっているのも感じていた。
主従関係があるコンビ
時は遡(さかのぼ)る。僕は二度売れた。二度とも、世間からイケメンと言われる相方とのコンビで、だ。
(以下、続く)
『自分を大切にする練習 コンプレックスだらけだった僕が変われたすべてのこと』
形式:ソフトカバー 四六判 224ページ(2色192ページ/カラー 32ページ)
価格:¥1650(税込)
発行:講談社 ISBN:978-4-06-530216-3
りんたろー。より
コンプレックスだらけだった過去の自分に読ませたい気持ちで一心不乱に思いの丈を綴り切りました。時間を見つけてはパーツ、パーツを書きながら進めていって、「これ、どうまとめるのかな?」と思う部分も正直あったのですが、担当編集スタッフの奮闘もあり、最後はピシッと芯が通った一冊に仕上げられたと思います。
この本についてのインタビューをしていただいた方と雑談をしたとき、「私は自己肯定感が思いっきり低いから、いろいろな自己啓発本読んでも、『それが、できたら苦労しない!』って全くピンとこないことが多くって。でも、この本は天邪鬼にならずに素直に読み切ることができました。エモさがありながら、きちんと腹落ちするし、本当に視界が開けたような気持ちに。どの家庭も一家に一冊、『家庭の医学』のように常備したらいいのに!」と言っていただけたとき、お世辞だとしても嬉しかったし、「ちゃんと僕の思いが伝わる本にできたのかもしれない」とホッとしました。
自分を後回しにしがちな昔の僕のような方に、どうか届きますように!
目次
りんたろー。
1986年生まれ。2008年4月、東京NSCに14期生として入学。2017年末に兼近大樹を誘い、お笑いコンビ「EXIT」を結成。ネオ渋谷系チャラ男漫才と称するしゃべくり漫才のツッコミを担当。ネタ作りも担う。
【Twitter】@rinnxofficial
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【note】https://note.com/rin_official
【YouTube】EXIT Charannel
【TikTok】@rintaro_official
【りんたろー。個人YouTube】EXITりんたろー。のYouTubeチャンネル
撮影/魵沢和之(まきうらオフィス)
Edited by 大森 葉子
公開日: