僕にはそうする自信も才能もないのもわかっている。なんならいろいろな情報を入れる度に、この世は正解と不正解だけで成り立ってないことがわかり、いっそう何かを明言することを躊躇してしまう。人の数だけ考え方はある。答えはひとつだけではないと気づけるようになったからこそ、白黒をハッキリさせることに不安になってしまう。
そんな時に、「答えをスパッと言い切ってもらうと、自分が答えを見つけた時と同じように気持ちいいらしいですよ。だから、どんどん皆、ラクして気持ちいいほうに行っちゃうんでしょうね」と教えてくれる人がいた。
たしかに、そうだ。それはすこぶるラクチンなことだ。でも、それでいいのだろうか? それでは声が強いだけの人の発言にすべての声が集約されてしまうのではないか?
自分の中の迷いや疑問をそのまま発信して、何が悪いのだろうか?
あぁ、僕に求められている役割はこれだったのか! 取り繕うの、やーめた!
「できないことはできない」「わからないことはわからない」とハッキリと言ってしまおう。「意見がない自分」「持たざる者としての自分」を、きちんと自覚し、認めて、それを詳らかにしてしまおう。
すると、今まで自分の心を縛っていた鎖のようなものがスルスルと解けていくのを感じた。今まで一切聞こえなかった自分の心の声のようなものが、微かにだが聞こえるようになってきた。
不器用だって下手くそだっていいじゃないか。ずっと背伸びじゃ歩けない。かりそめの僕より、それはよっぽど僕なのだ。そう割り切ったら、言葉が以前よりスムーズに出てくるようになってきた。
「私も自分の気持ちとかわからないし、あんまり意見がないほうだったのですごく勇気をもらいました」と視聴者から。「なんか最近のりんたろー。君、等身大ですごくいいよね。僕は好きだなぁ」とスタッフの方からの声がたくさん届いた。
もちろん、僕の発言に対する苦言は相変わらず矢のように飛んでくる。僕も勉強不足な面が多く反省することはあるけれど、自分の発言に自分で責任がもてるようになった分、ガラスのハートは少しだけ打たれ強くなり、はね返せる柔軟性が備わってきたように思う。
できないなら、できないなりの振る舞いがある。それを認めてくれる人がいる。何より大切なのは、自分自身がそんな等身大の自分をきちんと受け止めてあげること。そして、「それでいい」と、きちんと認めてあげること。
誰かの「いいね」に励まされることは確かにある。けれど、誰かの「いいね」がほしいがためだけに上辺を取り繕ったり、誰かの言葉を借りたりするだけでは、自分の輪郭がどんどん消えていく。世間の中に溶けていく。
まず、自分で自分に「いいね」をしてあげられたら、それだけで十分だ!
『自分を大切にする練習 コンプレックスだらけだった僕が変われたすべてのこと』
形式:ソフトカバー 四六判 224ページ(2色192ページ/カラー 32ページ)
価格:¥1650(税込)
発行:講談社 ISBN:978-4-06-530216-3
目次
りんたろー。
1986年生まれ。2008年4月、東京NSCに14期生として入学。2017年末に兼近大樹を誘い、お笑いコンビ「EXIT」を結成。ネオ渋谷系チャラ男漫才と称するしゃべくり漫才のツッコミを担当。ネタ作りも担う。
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撮影/魵沢和之(まきうらオフィス)
Edited by 大森 葉子
公開日:
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