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実は一番深刻な事態は、「感情モード」の脳資源を使いきったとき
モード別の脳の資源の中でも、もっとも枯渇しやすく脳疲労が溜まりやすいのが「感情」のモードです。人を相手にする仕事、例えば、子どもやお年寄りを相手にするケア領域にお仕事の方たちは、優しく接する、怒らないよう理性を保つ、共感して寄り添うなど、自分の感情をコントロールしながら1日を過ごさなければなりません。
腹が立つことがあったとしても、怒っちゃいけない、優しくないといけない――。そんなふうに感情に嘘をつき続けなければならないので、「感情モード」の脳資源を使い切ってしまうことがあるのです。感情資源を使い切ってしまうと、次第にこんなことが起こるようになると言われています。
・人がモノのように見える
・イライラして愚痴が多くなる
・食事の変化(味覚が変わる、過食になる、拒食になる)
・体に痛みが出る
・不眠になる
感情を動かすことができなくなって、機械的に人を管理するようになったり、家に帰ってもモードが切り替わらず、家族にキツく当たってしまうことも。感情を使い切ることは、認知能力にまで影響を与えることなのです。
ケア職に就く方たちはもともと感情資源が豊富な方が多く、感情労働が得意な方たちといえますが、もし「道を歩いている人が邪魔」だと感じることがあったら、それは脳が感情疲労を起こしているサインかも。そんなときは人よりも先に自分を労り、疲労の回復に努めることが大切です。
脳疲労の原因は? 気づかないうち疲れていく脳
こんなふうにして、私たちは無自覚のままに脳疲労のリスクに晒されています。ここ最近注目されている、「Zoom fatigue(ズームファティーグ、Zoom疲れ)」もその1つ。
コロナ禍で浸透した「Zoom」に代表されるオンライン会議はとても便利なデジタルツールですが、相手の表情、振る舞い、声の大きさなど、リアルに他者と接するとのは異なり、空気感や雰囲気が伝わりにくく、画面を凝視していなければなりません。
これは、相手との距離を取れない狭いエレベーターの中で、長時間顔を突き合わせて会話している環境に似ています。考えただけでもストレスですよね。加えて、Zoomでは画面に映る自分の顔を見られることから、自らの表情や振る舞いまで、無意識のうちにモニタリングしてしまうのです。これでは、脳が疲れないわけがありません。
デジタルツールは便利な反面、現実世界で人とかかわり合うよりも、知らず知らずのうちに脳の資源を消費することがある。そんな側面があることも、覚えておくといいかもしれません。
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脳の休息には「没頭」が一番!?