マウント地獄は、発想の転換でポジティブに乗り越えて
一方、重課金を笠に着たマウント合戦への対策はというと、若干センシティブなところです。なぜなら、推しとて霞を食べて生きているわけではありません。どんなエンタメもビジネスである以上、よりお金を動かす力を持っている人が優遇されるのが市場原理です。その観点から言うと、推しにさらに高みに上りつめていただくためには、お金を落とせるオタクの力が欠かせません。
ですから、いかに重課金ユーザーをファンにするかは、推しにとっても大事なところなんですよね。どんなコンテンツも無銭ユーザーばかりではいずれ滅びる。そこをオタクが私的な感情でモヤモヤしたところで、推しの足を引っ張りかねません。
お金を積んだオタクの方が偉いのかと言われればそんなことはないと思いますが、どんなホテルでもより眺めのいい部屋を予約しようと思えば金額はつり上がっていきますし、株主総会もより多く株を保有している人の方が影響力があるのは当然の話です。そして、より高額を出した人間がその特権を満喫しても、咎められることでもなんでもありません。
なので、ここは自分の認知を改めた方が得策。お金を積んでいるオタクに対しては、自分の代わりに推しを延命させてくれる人柱だとでも思っておきましょう。ことさら感謝する必要もありませんが、嫉妬も無用。あ〜、私の代わりに誰かがお金を出してくれているから、推しの衣裳もよくなるし、お肌もツヤツヤになっとるわ〜くらいに考えて、より美しく輝く推しを目いっぱい楽しむことが平和的な解決手段です。
そして、たとえばYouTubeを回すとか、雑誌を買ったときは必ず感想のハガキに推しの名前を書いて編集部に送るとか、無銭もしくは低課金でできる支援を欠かさないことが、推しの力になるのです。
最後に。このしんどさも推し活の醍醐味だと考えて
そもそも推しとは、自分にまだこんなピュアで甘酸っぱくて激しい感情があったんだと思い出させてくれるもの。リアルな恋愛だって楽しい思い出ばかりではなかったはず。ヤキモチを妬いて困らせたり、好きという気持ちが追いつかなくて無闇に振り回したり、不器用で苦しい経験をした人も多いのではないでしょうか。
誰かを好きになる以上、そんなコントロールの効かない感情が生じるのはごく普通のこと。推し活もまた同じです。ですから、ハマればハマった分だけ、しんどさが比例して膨らむのも仕方がないと心得ておいた方がマインドセットとしては適切かもしれません。
むしろ大人になって、配慮や分別を身につけた僕たちは、自分の中にある巨大な感情を無遠慮に相手に押しつけることなどできなくなってしまいました。そんな思春期のように無防備な心の揺れ動きを再体験させてくれるのが推し。ですから、推し活にしんどさはつきものなのです。
なんなら、久しぶりに沸いたこのときめきを、しんどさも含めて、思う存分味わってみてはいかがでしょう。健康な肉体を手に入れるには運動が欠かせないように、お顔のたるみを解消するためにマッサージをするように、この激しい気持ちのアップダウンも心のセルフケアだと捉えてみる。嫉妬も、モヤモヤも、イライラも、すべては心のハリを保つレッスン。推しは、心の皇潤です。時には推し疲れしながら、心の筋力を鍛えていきましょう。
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イラスト/小鈴キリカ(vision track)
Edited by 関野 桃子
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