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“顔パンツ”とも表現されるほどマスクラバーが多いのは日本ならでは!? 外国との決定的な違い
教えてくれたのは……
社会学者
堀井光俊
英国立ケント大学社会学部を卒業後、同大学大学院に進学し、2006年博士号(Ph.D.)を取得。現在は秀明大学教授で、イギリスに在住。著書に『マスクと日本人』『「少子化」はリスクか』『女性専用車両の社会学』(すべて秀明大学出版)などがある。
日本人女性から漏れ聞こえる「マスク姿のままでいたい」という声。「マスクを外すのは、すっぴんで歩くのと同じ」「ノーブラみたいな気持ちになる」……と、たった3年でマスクをつけている状態が“私の顔”に。日本独特のマスク依存、その深い理由を社会学の専門家が分析。
「私の住んでいるイギリスでは、一時期、コロナウィルス対策としてマスクの装着が法律で定められ、屋内や公共交通機関など、一部の場所でマスク着用を守らなければ罰金が科せられました。そのため、嫌々つけている人がほとんどで、コロナウィルスの“全盛期”でさえも装着義務のない屋外でマスクをつける人はほとんどいませんでした。一方、日本は、マスクが義務付けられたわけではなく、感染予防として政府が推奨しただけにすぎない。ですが、ほぼすべての人がつけていたそうですね。
それは、日本とイギリスの感染リスクのアナウンスの違いなどもあると思いますが、なにより、周囲の視線が気になる、つけないと約束事を守れない人だと思われるのではないか、というようなモラル的な観点が大きかったのではないでしょうか。ほぼ全員が365日どこでもマスクを装着する環境は、明文化されていない決まりを素早く習慣化して保持するという、日本におけるモラル形成の特徴を示しているのかもしれません。
ですが、道徳意識だからこそ、外しにくく、いざ『つけなくていい』と言われても周囲の様子を伺いながら……ということに。全員がマスクを外せば、むしろつけていることに違和感が出て、『マスクを外すのが怖い』という人も減るかもしれません。けれど、現状の日本を想像する限り、罰則などの強制力がない限り、元通りになるのはずいぶんと先になりそうですね」
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“マスク大国”日本、100年にものぼる歴史とは?