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PROFILE
野木亜紀子
脚本家。代表作に映画『罪の声』『アイアムアヒーロー』『犬王』、ドラマのオリジナル作品に『アンナチュラル』『MIU404』『コタキ兄弟と四苦八苦』など。『獣になれない私たち』で第37回向田邦子賞を受賞。
■インフォメーション
『連続ドラマW フェンス』
復帰50年を迎えた沖縄を舞台に、東京のライター“キー”(松岡茉優)と、沖縄で生まれ育ったブラックミックスの“桜”(宮本エリアナ)のバディが性的暴行事件の真相を追うエンターテインメント・クライムサスペンス。WOWOWにて毎週日曜午後10時より放送中、WOWOWオンデマンドにて配信中 [無料トライアル実施中]。ほかに、青木崇高、與那城奨(JO1)、三石研らが出演し、新垣結衣が特別出演する。
ドラマで「性被害」を正面から描くことの意義とは? 当事者が苦労しなくていい時代へ
──沖縄を取り巻く問題を描く中で、性的暴行事件を主題に置いたのはなぜだったのでしょうか。
野木亜紀子さん(以下、敬称略)「沖縄を舞台にしたクライムサスペンスをつくりませんかとオーダーしてくれたのは、プロデューサーの北野さんでした。米軍関係者の事件として、埋もれている性暴力事件が多々あるという話で、私発信のテーマではありませんでした。ただ、沖縄に限らず、性被害の話はどこにでもありますよね。映画界でも告発があったことは記憶に新しいと思います。日本のドラマで、性的暴行事件が要素の一つとして扱われることはありますが、その後を含めて描かれていることはあまりないので、自分が書くならそこまで描きたいなと思いました」
──性犯罪については語れない、語ってはいけないものという印象が過去にはあったと思います。被害自体が恥と捉えられることも少なくなく、長い間、沈黙の犯罪という形で見られていた印象があります。それはエンタメ作品においても。
野木「センシティブな題材ゆえに扱いきれてない部分があると思います。それにアウティングのように周りが勝手に言っていいことでも、被害を訴えることを強要すべきことでもないとも思うわけです。
日本でも『#MeToo』運動は盛り上がりましたが、全員それができるかというと、人それぞれの事情もタイミングもある。声を上げられない当事者が、罪悪感を持ってしまうこともあります。だけど、これ以上背負う必要も、申し訳なく思う必要もないし、それぞれができる範囲でやるしかない。警察はもちろんですが、周囲の人が戦ってくれれば、本来は一番いいですよね。だけど現実は、被害を受けた人が矢面に立って戦わなければいけない状況があって、それに対するハレーションもすごいので、本当に覚悟と勇気がいることだと思います。当事者がそこまで苦労しなくていい世界にしていかなくてはいけないのだと思います」
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沖縄取材で見えた、女性たちのリアルとは?