『最果てのセレナード』
著:ひの宙子
あらすじ
東京から北海道の田舎町に引っ越してきた天才ピアノ少女の小夜。同じ中学に通う律の母親にピアノを習い始めたことから、二人の仲は深まっていきます。しかし小夜は、実は自分の母親を殺したいという願望を持っていて、律にだけそのことを告げます。──それから10年後、東京の週刊誌編集部で慌ただしく働いている律のもとに、ある知らせが入ります。それは、北海道で白骨死体が見つかったというもの。10年の時を経て、律と小夜の物語が再び動き始めて……。
── 一巻にしてあっという間に物語が佳境に突入していった印象で。早く続きが読みたくてたまらないのですが、まずはこの物語を描こうと思ったきっかけを教えていただけますか?
ひの宙子さん(以下・ひの)「一番のきっかけは、私が子供の頃、ピアノを習わされていたことです。“習わされていた”という言い方をしたように、決して積極的だったわけではなく、基本的には母に押されて、というものでした。でもピアノ自体は好きだったので、何かピアノをモチーフにした作品を描きたいなあと思って。そこでピアノにまつわる人間関係を詰めていったら、自然とサスペンスになったという感じです。ピアノを習うきっかけって、大抵は母親の独断専行であることが多いじゃないですか。母親が『やらせてみようか、やらせてみて才能があるかどうか見極めよう』という……。だからピアノを習っている子、というキャラクターをメインに据える以上、母親の存在が切り離せなかった。そこから小夜の性格、さらに小夜と律の関係……と、全てに母親の存在が影響してきて。必然的にサスペンスになっていったというわけです」
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小夜の母親は“毒親”なのか?