美容医療との向き合い方

【ボトックス注射のウソ・ホント】ボトックスマニアの医師が徹底解説!

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メスを使わずシワ取りができることでおなじみの施術、ボトックス注射。痛みもほとんどなく傷跡が残る心配もないことから、幅広い年代に浸透している美容医療ではあるけれど、イメージ先行で誤解されていることも……。ボトックスマニアを自認する医師に、ボトックス注射のウソとホントを教えてもらった!

教えてくれたのは…
西田美穂先生

BEAUTY TUNING CLINIC(美容調律診療所)院長

西田美穂先生

美容皮膚科・形成外科専門医・抗加齢医学専門医。加齢に伴う皮膚や筋肉、骨の変化に対し、“調律する”ことで本来の美しさを引き出すような美容医療を目指す。「趣味は歌舞伎鑑賞と表情筋観察とボトックス注射」とプロフィールに明記するほどのボトックスマニア。その治療によりバランスの取れた顔になれると全国から患者が来院している。
HP:https://beautytuning.com

「ボトックス注射で期待できる効果は『シワ改善・汗止め』である」

ホント! 神経と筋肉に働きかけ、シワを改善し汗の分泌を抑制します

西田先生
西田先生

そもそもボトックスとは、ボツリヌス毒素から抽出した成分を精製したボツリヌストキシン製剤の一般名称。この製剤は神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を神経終末で阻害するため、筋肉の動きで生じる表情ジワを軽減させたり、汗の分泌を抑えたりすることができます。また定期的にボトックス注射を打つことで、食いしばりなどによって発達した咬筋の動きを抑制することができるので、エラ張りを解消してスッキリとしたフェイスラインをキープすることも可能に。


「ボトックス注射の製剤の種類はいろいろあるけど、どれを選んでも大丈夫?」

日本で使用されている製剤の中には、効果と安全性に疑問があるものも

西田先生
西田先生

日本国内で、眉間の表情ジワや目尻の表情ジワの治療薬として厚生労働省の承認を受けているボツリヌス治療薬は、 “米国アラガン社のボトックスビスタ®”だけ。ほかにも種類はありますし、他国では承認されているものもあります。しかし不純物が多く含まれている粗悪な製剤もあるし、効果が弱いなど問題点が指摘されているものも。安全性と有効性に問題があるとして韓国製の製剤が回収になったこともありました。製剤の安全性に不安を感じたら、必ず医師に確認を。


「ボトックス注射の効果は約3〜4ヵ月持続するってホント?」

ホント! 個人差はありますが、4〜6ヵ月で元の状態に戻ります

西田先生
西田先生

注射をしてから2~3日で効果を実感し、だいたい2週間で最大限に。それが約3~4ヵ月続きます。表情のクセがなくなることでシワができにくくなるので、もう少し効果が長く続いているように感じる方もいます。このため、いい効果を保つには4〜6ヵ月に1度の施術がおすすめです。


「ボトックス注射を打つのを止めると、元の状態よりシワが増えるって聞いたのですが……」

ウソ! 元の状態に戻るだけです!

西田先生
西田先生

これは都市伝説ですね。ボトックスは神経に作用して筋肉の動きをゆるめるもの。時間が経てば神経機能が回復するため、筋肉は元の状態に戻ります。表情のクセでできていたシワは復活するかもしれませんが、元より増えることはないです。


「ボトックス注射は何回繰り返しても問題はない?」

短期間に大量に打つのはNGだけど、適切な量と頻度なら打ち続けても問題なし

西田先生
西田先生

短期間に大量のボトックスを打つと抗体産生のリスクが高まるという報告もありますが、顔の表情ジワを改善するぐらいの量なら問題ないというデータも。動きが完全に戻る前に打つとシワが刻まれにくくなるという考えから、私は1年に2〜3回程度の施術をおすすめしています。
ちなみに私は、29歳から16年、自分にボトックス注射を打ち続けてきました。妊娠・授乳中の2年はお休みしましたが、それ以外は3~6ヵ月に一度、いろいろなところに打ってきています。表情が固まることも効きが悪くなることもないし、とくに副作用はありません。


「ボトックス注射はどのクリニックで打っても仕上がりに違いはない?」

打ち方、打つ量で効果も仕上がりも変わります

西田先生
西田先生

同じボトックス製剤を使ったとしても、医師の技術で効果や仕上がりに差は出ます。私は、患者さんのシワの状態によって打つ量、打つ部位、打つ層も変えて調整しますし、2~4週間後にもう一度診察し、さらに細かい調整を行うようにしています。筋肉の付き方や表情のクセも人によって違いますから、顔全体を見ながら正しい知識を持って施術しないと、バランスをくずしたり、表情が不自然になったりというトラブルが出ることもあるんです。カウンセリングをしっかりしてくれて、施術内容の効果だけでなく問題点についての説明も納得がいくまでしてくれるような医師にお願いするのが安全だと思いますね。


「眉間ボトックスは失明する場合があるってホント?」

ウソ。ただしヒアルロン酸注入での失明は報告があります

西田先生
西田先生

ボトックス注射の量や打ち方によっては、まぶたを開ける筋肉にまで製剤が広がって、目を開けにくくなってしまうことはあると思います。でもボトックス注射で失明することはありません。むしろ失明という医療事故は、ヒアルロン酸注入で起こることがあります。ボトックスとヒアルロン酸をごっちゃにしている人も多いんですが、ボトックスは筋肉の動きをゆるめる製剤で、眉間の縦ジワ、あごの梅干しジワ、目尻のカラスの足跡のような表情ジワに有効なもの。それに対してヒアルロン酸は、溝や凹みを埋めたいとき、ボリュームを出したいときに有効な製剤なんですね。ヒアルロン酸が目(網膜)の血管に流れて詰まることで失明したという報告があります。ボトックスは打った筋肉にしか効かないので、それ以外のところに作用することはありません。


「エラボトックスをするとたるみやすくなるってホント?」

人によってはたるみが目立つこともあります

西田先生
西田先生

咬筋(エラ)が小さくなることで、皮膚が余ってたるみが目立つことはありえます。とくに30代後半以降で頰コケや頰からあごにかけてのたるみが気になっている方は、施術前に医師とよく相談したほうがいいと思いますね。エラボトックスは小顔ボトックスともいわれていますが、それが若見えにつながるとは限りませんから。


不機嫌に見えたり、老け見え印象を加速させたりする眉間、額、目尻、あごなどの深いシワ。でもボトックス治療により、進行を食い止めて新たなシワの発生を予防することは可能。まずは信頼して顔を委ねられる医師を見つけて、相談することから始めてみて。

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イラスト/二階堂ちはる 取材・文/穴沢玲子

Edited by 西村 美名子

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