2020 ヒットコスメ【スキンケア編】
ニューノーマルの時代がやってきた2020年。翻弄されながらも、たくましく前を向いて進み始めた美容トレンドの動向を、各分野のエキスパートが解説!
語ってくれたのは……
吉田さん
今年は本来、オリンピックイヤー。コスメ業界もそこに照準を合わせていて、盛り上がる予定だったんです。実際、多くのブランドがアイコニックな製品を進化させてきました。
楢﨑さん
スケールの大きな幹細胞研究の成果を盛り込んだカプチュールを筆頭に、名品のパワーアップなど、確かに豊作だった印象です。
松本さん
このご時世においても、顕著に売れていたのは、研究や開発を積み重ねてきたもの。きちんと認められたように思います。
吉田さん
代表的なのがエスティ ローダー。夜のリペアという出発点から視点がブレることなく、エピジェネティクスの最新知見を取り込み、進化。肌はまだまだ美しくなる可能性があることを示しました。
吉田さん
また、アルビオンは、強みである乳液に、発酵由来の乳化成分を採用して、浸透感を高め、なじませた瞬間からの透明感や弾力もアップ。白神研究所に新たに乳液製造のための施設をつくるほどのチカラの入れようで、さらに最高品質にしていくものづくりに感心しました。
楢﨑さん
洗いものを得意とするブランドが、脇役ではなく主役として洗顔やクレンジングを位置付ける流れも。カネボウの糸引き洗顔料をはじめ、ただ汚れを落とすだけではなく、続く化粧水の潤いを引き込むブースター洗顔も充実。
松本さん
クラリフィックの酵素ケアのようにキーワードが明快で、キャッチコピーがつけやすいものも多かったですね。クラリフィックはみずみずしくて心地よいテクスチャーと、透明感が増したことが直後にわかるスピード感も特徴的。
松本さん
ポーラもつけ心地がいいだけではなく、なじませた瞬間に肌にハリ感が出るのが心地いい。つまり、テクスチャーそのものとともに、あと肌自体の感触がよく、瞬間的にちょっといい肌に見せてくれる。さらに、そのハリが持続して、日に日に育っていくみたいなところまでワンセットでできるようになったのは、本当にすごいことですよね。
楢﨑さん
ピュアショットのスルッと入るテクスチャーや、翌朝の肌の激変ぶりも話題でした。
吉田さん
まさに、待ったなしのスピード感。こういう生活になって、じっくり育み系が来るかと思いきや、やっぱりみんなが求めていたのはスピード感だったんだな、と。そして、今年は、そのスピード感と確かな手応えがうまく融合された年ともいえそう。
楢﨑さん
そういえば、ちょうど昨年2月号の座談会で、2020年は「深層ケアがトレンドになりそう」と予想してましたが、大当たりでしたね!
吉田さん
真皮上部の乳頭層や、真皮のコラーゲンやエラスチンを生成する線維芽細胞がエイジングケアの鍵を握ることが次々とわかり、リフトディメンションをはじめ、深層ケアコスメが豊作でしたね。肌の中を最新の3Dデジタル技術などを用いて画像解析することで、より詳しく可視化できるようになり、新たな発見が多かったことも貢献しているのでしょう。
松本さん
クレ・ド・ポー ボーテのように、メソッドも一緒にというのも多く、偶然とはいえ、おうち時間が増えた今、すんなりと受け入れられた気がします。またそのメソッドを加えることで増す効果について、きちんとデータで示していたのも頼もしい。
楢﨑さん
3万円超えはVOCE世代にはハードルが高いようにも思いますが、高額の美顔器が売れていることも含め、スキンケア意識の高まりを考えるとアリなのかも。実際、マスクによってたるんだ顔をどうにかしたいという声をよく聞くようになりました。その点では、シャネルもオススメ。以前よりもおうちで過ごすことが増えた夜に、自分を慈しむケアは重要であり、リラックスを促すテクスチャーは、何かと不安な私たちの気持ちを癒やしてくれる。翌朝の肌のハリとツヤにもきっと満足するはず。
吉田さん
オンラインでの仕事が増えて、画面で自分の顔を見る機会が増えた結果、気づきが多かったのも確か。新たに取り組むべき課題が見えたというのは、リモートワークのメリットかも。
松本さん
ジュエリーが今、売れているらしく、その理由のひとつはオンライン会議での顔映りをよくするため、だとか。スキンケアともリンクするように思うし、しばらくは深層ケアによるリフトアップ&小顔コスメのトレンドが続きそう。そして、アイケアも。
楢﨑さん
そうですね。「興味ない」「続かない」といっていたアラサー世代も、真剣に始めています。
松本さん
今までは全顔でその人を認識していたけど、マスクをつけることで、目を見て判断するように。すると、じっくり見てしまうというか、「こんな目だったんだ」と気づくことが多い。それは逆も然り。よって、欠かせないものになりましたね。中でもクラランスはすぐにキュッと引き締まる感じがあり、メイク感覚でも使える。目元悩みに全方位から働きかけてくれる安心感があるうえ、「60秒で」とスピード感を謳っていたのも印象的でした。
吉田さん
クマにターゲットを絞ったエピステームは、さすが目薬のロート製薬発。皮膚だけではなく目の構造から見ているから説得力がある。
楢﨑さん
VOCE世代はクマ悩みが多いという点からしても、オススメですね。そして、マスクがらみでいえば、肌荒れに悩む女子も急増しましたよね。
松本さん
これも偶然かもしれませんが、敏感肌コスメも豊作でした。とくに美肌菌と敏感肌の関係をひもといたd プロは、今をなんとかしのぐのではなく、肌にすむ菌のバランスを整えて、揺らぎにくい肌を育てるというコンセプトに希望を感じましたね。
吉田さん
過激なことではなく、私たちの肌が本来持っているチカラを信じて美しくなりたい、というのが今のマインドだから、そこはしっくりきますね。
楢﨑さん
ザ パブリック オーガニックが、シャンコンでありながら、精油のチカラで免疫強化を図るというのもタイムリーでした。
吉田さん
お手頃価格なのにきちんとエビデンスをとる真摯な姿勢と責任感はすばらしいと思うし、通常なら門外不出の精油のレシピを、こんな時代だからとサイトで公開。今年、クリーンビューティやサスティナブルへの取り組みを多くのブランドが提唱し始めましたが、こういう透明性もクリーンビューティのひとつの指標だと思います。
松本さん
クリーンビューティ的な取り組みは、まだスタートしたばかりのところも多く、その真意を見極めるのは難しいけど、クラランスやシスレーは、創業当初からであり、信頼ができる。今後も続々発信されていくと思うので、選ぶ側の私たちもしっかりと学んでいく必要性を感じています。
吉田さん
2021年は、クリーンビューティが成熟しそう。来年は、「ここのこういうところがよかった!」と明確に話せるといいですね。
松本さん
そうですね。そして、誰もが「丈夫になりたい」「揺らがない自分でいたい」と願っている今、肌の奥深くから揺らがない肌をつくるという視点からも深層ケアはやっぱり熱そうですね。
吉田さん
真皮にプラスして、血管やリンパ、脂肪細胞など、より一層、深くなりそうな予感も。
松本さん
新HAKUのように、美容医療でできないことをコスメで、というような、ライバルとしてではなく、それぞれの個性を際立たせる方向性も楽しみです。
取材・文/穴沢玲子、中川知春、楢﨑裕美 構成/鬼木朋子
Edited by 鬼木 朋子
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