旅の途中、偶然出会った山の神社
北口本宮冨士浅間神社は、僕にとって大切な思い出のある場所。それだけじゃない、思えば人生のターニングポイントにいた僕の背中を押してくれた、ありがたい神社だ。
24、5歳の頃、当時はまだ彼女だった奥さんと、2人で河口湖へ遊びに出かけた。宿代を節約するために夜中に出発して、途中、車の中で仮眠をとるような、そんな旅行。小さなハッチバックの車にはもちろんナビなんてなく、僕らは途中で道に迷ってしまったんだよね。そうしてあちこち走っているうちに突然、大きな木が生い茂っている場所に出くわしたんだ。
「何ここ、すごいね!」って2人で盛り上がって、ちょっと車を降りて行ってみようということになった。その頃の僕ははまだ神社というものにまったく興味がなかったし、ここが神社だってことも最初は分かっていなかったくらい。でも中に入って社殿が見えたところで、「こんなに立派な神社、見たことないな」と思った。僕は地元が鎌倉で、立派な神社ならいくらでも見てるはずなんだけどね。きっと、山の神社ならではの静謐な雰囲気を新鮮に感じたんだろう。
すっかり圧倒されて、なんとなく「ここ、ご利益ありそうだな」と思った僕は、この時、自分の音楽の道が開けるようにと祈願した。そしてしばらくして、僕は本当にデビューすることができたんだ。
お礼参りも、まるで導かれるように
ただ、たまに写真を見返して「ここ、すごかったよねー」なんて話はするものの、この神社で祈願したことを僕はすっかり忘れてしまっていた。
その後10年近く経って、当時僕の髪を担当してくれていた美容師さん夫婦と一緒に温泉に行くことになった。その帰り、たまたま通りがかった道で、なんだか見覚えのある森を見つけたんだ。ちょっとここ寄っていい? というと、一緒に行った美容師さんはもともと神社好きで、「私たちも毎年初詣に来てるよ」と言っていた。ここが北口本宮冨士浅間神社という名前であることも、実はその時に教えてもらった。
最初にここを訪れた後、僕はいろんなことの調子がすごくよくなって、その結果、デビューすることもできた。二度目の時にそのお礼をさせてもらい、以来、時間を見つけては何度となく参拝させてもらっている。
僕が大人になってからはじめて神様に願い事をして、その願いが叶い、後から振り返った時に「あの神社のおかげかな」と思えたのが、ここ北口本宮冨士浅間神社だ。でもそれより僕は、はじめて訪れた時の「すごい、何だここは!」という衝撃を伝えたい。まだ神社のことはあまり知らない、詳しくないという人も、ここに来たらきっとそうなると思う。なぜなら、僕がそうだったから。事前情報は皆無で、神社好きの間では有名ってことはおろか、名前すら知らない、当時ゴリゴリのBボーイだった僕がわかったんだからね(笑)。この神社の凄さは、きっと誰もが“感覚”でわかるはずだ。
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