「加齢が怖くない」と発信するには、もっと言葉が必要だ
若い人やキレイな人から、「“年をとることは怖くない”なんて言われたくない」。これが、私が「老ける」というテーマで本を書こうと決めた一言です。
あるブランドのインスタライブでのことでした。私より十数歳年下であろう進行の方から「年齢を重ねることについてどう向き合っているか」と問われ、「私は年をとることを怖いと思ったことは一度もないんですよ」と答えたときに冒頭のコメントは書き込まれました。はっとしました。美容家として「加齢が怖くない」と発信するには、もっと言葉が必要だと。どうして怖くないのか、なにをもってそう言い切るのか。この思いをもっと丁寧にお伝えするべきだと感じたのです。
私は、老いについて不安や怖さを感じたことはありません。あるとしたら、体調により気をつけていかなければいけないとか、息子たちが大人になるまで元気でいなければならない、という健康についての思いです。だからこそ、冒頭の一言は、改めて「老い」を考える大きなきっかけになりました。
中年になり加齢が「怖くない、むしろ楽しい」と言い切れる理由
私は、どうして年をとることが怖くないのだろうか? 20代の頃から、大人の女性の美しさに心惹かれていました。どう頑張っても真似できない、あのあたたかさ、艶っぽさはどうやったら出せるのだろう? 先を生きる女性の笑顔や佇まいにふれるたびにその理由を探っていたほどでした。そんな美しさを見ながら、若さだけが美しさではないというベースができていたのは確かです。ですが、私自身が年齢を重ね、中年となったうえで「怖くない、むしろ楽しい」と言い切れるようになった確かな理由は、他にもあります。それは「美容が持つパワー」を実感していることです。これまで、数えきれないほどのアイテムを試し、使う方法を試行錯誤し、自分自身の肌や髪をキレイにする方法や、エイジングを味方につける方法を身につけることができました。これこそが、私が「年々、自分が楽しい」と言い切ることができる大きな理由だと確信しているのです。
確かに、アイロンをぴっちりとかけたようにシワひとつない真っさらな肌はキレイかもしれません。でも、少し色あせ、ところどころに使用感が見える肌。そこには月日を重ねたものにしか出せないぬくもりや、丁寧に心を込めて育てられた愛を感じることができます。そんな肌を「美しい」と思うのです。
“若さ信仰”はまだまだ続く中で、「まだまだいくぞ!」
私たちの美しさはひとつではありません。まもなく46歳になる今、年齢を重ねるごとに「自由になる悦び」を感じています。キレイでいることができたら楽しいけれど、今はキレイでいることより、自分らしくありたい。10年前より、20年前より、今がいちばん自分らしくて楽しいな、と笑っていられる。年々そう思えるようになりました。
きっと、世間の“若さ信仰”はまだまだ続くでしょう。「ババァのくせに」。そんな言葉の槍を投げつけられることもあるだろうし、ときに自分の老いと対峙し、心がくもることもあるかもしれない。でも、「せっかくの自分の人生、まずはそんな縛りから自分を解放してあげたい」と思うのです。“美容”と名のついたこの本ですが、そっと気持ちが軽くなる、ときには「まだまだいくぞ!」と背中を押す、そんな一冊になれたら幸せです。
<新刊のお知らせ>
『老けない美容、老ける美容』
美容家・神崎恵が満を持して世に放つ、究極の美容本。“とことんシンプル”“徹底的にわかりやすく”にこだわり、誰もが実践しやすい自らが実感してきたメソッドを厳選し、詰め込みました。ヘア、メイク、スキンケアのポイント解説はもちろん完全プロセスも掲載。さらに、更年期や白髪対策、デリケートゾーンのケアなど、“老けのシグナル”への対処法も!
撮影/柴田フミコ ヘア/津村佳奈(um ami) スタイリング/石関靖子 文/神崎恵
Edited by 大森 葉子
公開日:
この記事に登場したプロ